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先生、早く縛って
第22章 指定席の女
そう考えると身が引き締まる思いがする。
もしかすると突然の用事というのは嘘で、次期社長として家を継ぐ俺を試すつもりでのキャンセルなのかもしれない。
そんなことも考えてしまう。
祖父が亡くなってからの父は多忙を極め、最近では髪にも白いものが混じりはじめている。
だから、今日の予定を故意にキャンセルをしたというのは俺の考えすぎなのかもしれないが。
「……はい、大丈夫です。行ってまいります」
玄関に膝をついて履物を揃えてくれた義母に送り出されながら、俺は父に向かってそれだけを答えた。
この家では父は絶対的存在だった。
5歳の時に母親が病死し、後妻として桜井家に入った義母は悪い人ではない。むしろ、血のつながりのない俺をこうして甲斐甲斐しく世話してくれる。だが、彼女は父の妻というより召使のようにも見える。
そして俺自身も……