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先生、早く縛って
第22章 指定席の女
父親は俺のことを跡取り以外の存在として見たことは無いように思う。
遊んでもらった思い出など、ない。
そして、生前の母について言う時の父の言葉。
ことあるごとに、とても美しかったという母と、その母に似ているという俺の外見ばかりを引き合いに出し……それはまるで母の人格を否定するように聞こえて俺を複雑な気持ちにさせる。
厳格というより、人としての情が薄い……
どうしてもそう思えてしまうのだ。
だが、俺にそんな気持ちを抱く資格はあるのだろうか?
風格ある店構えの自宅を出て、待たせていたタクシーに乗り込みながら、俺は父の態度と、先月、学校の書庫でミドリ先輩に対してとった自分の態度を重ねあわせていた。
あの時は先輩のゲームのような感覚に気持ちが冷めたと感じたが……本当の問題は自分の心にあったのではないだろうか。
俺の内面は……認めたくないが、父親に似ているところがあるのではないか?