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先生、早く縛って
第22章 指定席の女
近い距離で、真っ黒な瞳に見つめられ……俺と彼女の視線が絡み合う。
視線といっしょに言葉まで吸い込まれてしまった俺は、そのままじっと彼女を見つめ続けてしまっていた。
「……京都まで行かれるんですよね?」
おもむろに彼女が訊ねる。
どうして行先を知っているのか? そんな当たり前の質問さえ、目が合ってしまったことの気恥ずかしさで出てこない。
普段の俺なら女性と目があったぐらいで動じることはないというのに。
返答につまった俺を他所に、彼女は自分から疑問に答えてくれた。
「櫻会の……息子さんですよね? 私も同業者なんです。〝霞きもの〟という会社に勤めている……冴木蓉子と申します」
「ご存知だったんですか……俺……のことを」
「ええ、何度かお見かけして、櫻会の息子さんだということは……有名ですものね」
「有名って……?」
「まだ学生なのに、しっかりしてるって……あの厳しいお父様の下で、修行をさせられているんでしょう?」