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先生、早く縛って
第22章 指定席の女
俺が有名だとは思ってもみなかったが、父が業界でもそういう人間だと受け止められているというのは頷けた。
なるほど、その息子ということになれば、こちらが顔を知らないような彼女みたいな人でも俺のことをそういう風にして見知っているというのも有り得るだろう。
「そうだったんですか……いつもお世話になっております」
遅ればせながら挨拶をする。
出がけに言われた「一人でこなせるだろう」という父の言葉が頭に浮かぶ。会場に着く前から早くも思い知らされるとは。
「女の涙って……どう思いますか?」
「えっ?」
またしても意表を突く質問だった。
ドキッとしてオウム返しのように訊きかえしてしまう。
「涙……? どうして?」
「だって……さっき見てたでしょう、私のこと」