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先生、早く縛って
第28章 夢の途中

しかしそんなある日、休日に家で休んでいるところを俺は石塚に呼び出された。
突然の呼び出し……そして用件も分からない。

「市民病院までとにかく来い!」

石塚に言われたのはただそれだけだった。

病院に行くために、あの日、凛と一緒に来るはずだった川沿いの桜並木を俺は歩く。

途中〝理容 いしづか〟の前を通り掛かると、中から石塚の両親の大きな笑い声が聞こえて来そうなものなのに……今日の店は静まり返っていた。
しかし営業はしているな……石塚の家族に何かあった訳では無いらしい。俺は少し安堵した。

それにしてもこの道を歩くのも久しぶりだ。避けてた訳では無いが……いや、やはり俺は避けていたのかもしれない。

店を横目に見ながらさらに並木道を歩く。
桜は散りかけていて、花びらの流れが川面に美しい。
薄紅色に染まったその川の流れ……その桜の様子を花筏という。

凛……お前もこの花筏を見たのだろうか? 俺の知らない誰かと?

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