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先生、早く縛って
第34章 それはただの傷痕

後ろから殴りかかる男にひじ打ちをし、数人の拳を交わしながらパンチを食らわせる。
それでもしがみついてくる男を投げ飛ばすと……座敷から転げ落ちた男がテーブルごと横倒しになり派手な音を立てた。

すかさず結衣の状態を見ると、ところどころにしか衣服を身に着けていない状態で身体を丸めて震えている。落ちていた結衣のコートを着せてやるが、ぼんやりとした目で曖昧にほほ笑むだけだ。

怪我などはしていないようだが、酒臭いし……もしかするとおかしな薬を使われているのかもしれない。早くここから連れ出さなくては……

その時「ケーサツが来るぞー!」という石塚の声が聞こえた。

俺たちは警察など呼んでいなかったが、その声で男たちは「やべえっ」「ずらかれっ」などと……口々に叫びながら我先にと逃げ出していく。

そして残ったのは、初めに蹴り飛ばした藤川という銀髪の男だけだった。意識が戻りかけているのか、今は低い声でうめき声を上げている。

しかし、ここに長居をするのは得策ではない……男はそのままにして立ち去った方がいいだろうと俺は判断した。

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