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秘蜜に濡れて
第12章 曖昧な予感
先ほどのドアの影を見つめると誰も居ない。

「竜?」

「美紅」

後ろから上がってきたのは美紅だった。

その視線が撥春を探していた。

「撥春なら帰ったよ」

「…そう」

「…お前さ、もう諦めたら?」

「何を?」

「撥春の事」

「竜は好きな人いないの?何をしても手に入れたいくらい好きになった人」

竜の脳裏にはあいりが浮かび、視線を逸らした。

「ゼロじゃないなら、想うのは自由でしょ?」

踵を返す美紅を見送ると、竜のソファーに座りビールを頼んだ。

想うのは自由…か。

「竜!」

次から次へと声が掛けられる。

セックスの相手に不自由はしない。

何をしても手に入れたいなんて…。

「…っん、っん!竜、ねぇ、もっとぉっ!」

膝の上に乗って身体をくねらせる女の嬌声は今夜は何だか耳についた。

快楽はちゃんと感じてる。

「りゅ、うっ!あんっ!っはぁん!イくぅ!も、だめぇ!」

目を閉じればそれはあいりの声に代わる。

今、揺さぶっているのはあいりの肢体。

「イくっ…」

欲望に負けて瞼の裏の彼女を汚した。
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