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秘蜜に濡れて
第12章 曖昧な予感
月曜日、撥春を玄関で見送ると、貰った鍵で錠をした。

笑みを浮かべて帰路に着くあいり。



仕事はいつも通り。

今週は入力作業が多かったが、金曜日は定期健診があった為遅らせることは出来ない。

撥春からもリハや、現地でのリラックスした写真が添付されてきた。


「検査の結果、異常なし」

主治医の小田 邦章先生はにっこりと笑った。

「この前のは…?」

嘉紀を見た時に、今の嘉紀でない嘉紀が見えたのは何だったのか。

「んーまぁ医者の立場からいうと幻覚と言うかな…ただ君の角膜を提供した人と関係があった…というとロマンチックだろうね」

白髪を撫でつけながら、目を細めた。

診察室を出たあいりは、検査の結果を撥春にメールした。

少しでも安心させてライブに挑んで欲しかったのだ。

''良かった、来月の頭には一度そっちに戻るから''

あいりはその日はあの鍵で家で待っていようと考えた。

「相馬 あいりさん?」

名前を呼ばれ振り返ると、そこには嘉紀が立っていた。
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