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秘蜜に濡れて
第12章 曖昧な予感
「逢いたい…です…」

香りに包まれながら、何時の間にか眠りの淵へと落ちていった。


…遠くで電話が鳴ってる。

あいりは瞼を開けて鞄に手を伸ばした。

「…もしもし…?」

寝ぼけ眼で電話に出る。

『もしもし、相馬?』

「黒澤さん?何かありましたか?」

書類に不備でもあったのかと、あいりはぱっちりと目を覚ました。

『もう家か?』

「?はい、そうです」

『それならいいんだけど』

「何か…?」

『いや、さっき会社を出たら男に相馬はもう帰ったかって聞かれて…ちょっと気になって』

会社にまで来た男?

『寝てただろ?起こして悪かったな』

「いえ…あ、電話ついでにすみません、火曜日に貰った領収書、四点ほど落ちないのがあったので机に挟んでおいたの気付いて貰ってますか?」

『…気づきたくなかったけど、気付いた…』

電話の向こうで雪夜がどんな顔をしているのか、容易く想像できた。

「そういう事なんで宜しくお願いします」

クスクスと笑い声が洩れると雪夜は不貞腐れた言葉を返して電話を切った。

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