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秘蜜に濡れて
第13章 刹那の代償
昨夜のライブで外れた箇所を手直しする美紅。

貴文は飲み物を取りに出て行ってしまい、あいりはその部屋の隅で立ち尽くしていた。

美紅の手はあっという間に手直しを終わらせる。

「あなた、仕事は?」

「営業事務です」

美紅の眼には明らかな嫌悪感。

あいりは貴文の姿を探してドアを見つめる。

「撥春とはいつから?」

「…半年、くらいです…」

射竦められる眼には恐怖すら感じていた。

「美紅っ!」

ドアを開けたのは竜だった。

「…何?ノックくらいして」

冷たい声でさっと身を翻す美紅。

「…撥春は…こっちだよ」

あいりの手を引いてその部屋を出た。

「あ、あの阿部さんが…」

「貴文なら正宗に呼び出されてあっちにいるから大丈夫」

繋いだ手を振り払う事もなく、素直に自分が言った事を疑いもしない。

連れ去ってしまえたら…。

「撥春!」

ぱっと笑顔を浮かべたあいりの視線の先には撥春。

その手を擦り抜けて撥春の元へと駆け出していく。

髪から薫った残り香だけが…胸を締め付けた。



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