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秘蜜に濡れて
第13章 刹那の代償
「あいり、ごめん」

撥春は確かにそう言った。

そう言って壁に掛けてあったキャップを被せ、鞄を取るとそのままタクシーに飛び乗った。

飛行機にたまたま空席があって…有無を言わさず此処まで連れて来てしまった。

片時も離れ難くて。

「じゃ、行ってくるから」

玄関で終わる筈だったのに。

「貴文、あと頼むな」

リハに向かう撥春を見送ると貴文に連れられて客席へ向った。

沢山のスタッフが忙しなく動き回るそこで、あいりは身を縮めてステージを見つめていた。

「貴文くん、衣装なんだけど…」

怪訝な顔であいりを見つめる美紅。

「はい、二度目のチェンジの分で司さんのが…」

「その子は?」

「あ、えと…伊坂さんの彼女さんで相馬さん、こちら衣装担当の橋口さんです」

「はじめまして…」

「…貴文くん、時間ないんだけど?」

「はい、じゃ、あの相馬さんもこちらに」

任せられた貴文はあいりを連れてバックルームへ向かう。

ステージ上からは竜がそれを見つめていた。
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