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秘蜜に濡れて
第15章 奈落の底
派手な音が鳴り響き、呻き声すら聞こえた。

「おいっ、何だったんだ?」

階段を上がってくる足音に、ナオヤが振り向いた時だった。

バキッと鈍い音がして、ナオヤの体が吹っ飛んだ。

「…はぁん…」

ナオヤの尖先が離れると、朦朧とするあいりは切なさに声を漏らす。

「あいりっ!」

駆け寄ったのは竜だった。

目隠しを外してやると、虚ろな瞳でぐったりと倒れ込む。

ボロ布のようなシーツでその身体を包んで隠すと、竜は向き直った。

「竜!やめろっ!!」

馬乗りになって殴り続けていた竜を、追いついた嘉紀が止めに入る。

顔が変形する程に血に塗れたナオヤはぐったりと動か無い。

「あいり!」

律もあいりに駆け寄った。

「後のことは俺に任せろ、行け」

嘉紀に促されてあいりを抱き上げると、竜は律と共にタクシーに乗り込んだ。

「竜、あとお願いできる?」

着いたのは竜のマンションだった。

嘉紀が手配した医者と律が部屋から出てくる。

「鎮静剤が効いてるから落ち着いてるわ、目が覚めるまで一緒に居てあげたいんだけど、明日は撮影が遠いから…」

「あとは任せて」

律は頷いて、ベッドに横たわるあいりを見つめるとドアを閉じた。

「薬を抜くために水分をよく補給するように」

医者はそう言って、律と共に帰っていった。
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