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秘蜜に濡れて
第15章 奈落の底
鬱血した手首が痛々しい。

時折眉間に皺を寄せて苦悶の表情を浮かべる。

「もう…大丈夫だから…」

額に掛かる濡れた髪を払ってやると、竜は微笑む。

規則正しい寝息を確かめて部屋を出た。


「それで、彼奴らは?」

『警察沙汰にすると、彼女は証言台で晒し者だ、それは…避けたい、ただ社会的制裁は何も法律だけじゃないからな、それ相当の報復はする』

「…岩崎さんに任せます」

『彼女は?』

「鎮静剤を打ってもらって、今は眠ってます」

『そうか、撥春が戻るのは明後日だったな?』

「撥春には俺から連絡します」

『わかった、彼女の会社と家にはこちらから連絡しておく』

「はい、お願いします」

『竜…いや、いい…』

歯切れ悪いまま電話は切れた。

あいりが目を覚ました時にと竜は近くのコンビニで飲み物やスィーツを買い込んだ。

チャリチャリと鍵を掌で遊ばせて、鍵穴に差し込む。

開き掛けたドアから悲鳴の様な声が漏れた。

ばさっとコンビニ袋を落とすと、竜は寝室のドアを開けた。

「……っや、あ…恐い…暗いの…ぃ、や…」

ベッドの脇で蹲るあいり。

「あいり!もう大丈夫だ!大丈夫だから!」

竜はあいりを抱き締めながら、サイドテーブルの間接照明を点けた。

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