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秘蜜に濡れて
第15章 奈落の底
あいりは竜の首に手を回し、ぎゅっと抱き着いた。

「…っふ…喉…熱い…」

汗を掻いたサイドテーブルの上のペットボトルに手を伸ばすと、キャップを開けてあいりの唇に寄せた。

乳飲み子の様にそれを飲み干すあいり。

唇の端からぽたぽたと溢れ落ちる度に、あいりの身体はびくびくと反応する。

「…っは…ぁ…んん…ぁ、はぁ…」

ペットボトルを口から離すと、熱っぽい瞳で竜を見つめた。

「あいり…?足らないならもう一本持って…」

床に倒れたペットボトルから、残っていた僅かな水が溢れて染みを作った。

「…欲し…ぃ…」

「わかった、持ってくるから…手、放して?」

あいりは手を離すどころか、身体を擦り寄せてくる。

「…ぃや…」

竜の首筋に口唇を当てる。

「あいり…?」

「…も、う…きらいになっちゃった…?」

潤む瞳に竜は困惑を隠せない。

ふと脳裏を過るあの言葉。

''催淫剤だって、カプセルを飲むと…かなりヤバいらしい、記憶が飛ぶって''

何もかも憶えていないなら…。

「あいり…俺の名前…呼んでよ」

それは竜にとって賭けだった。

記憶が残らないなら…全部無かった事になるのなら、自分を知ってて選ぶのなら堕ちても構わない。

「…りゅ、う…?」

自分だけは憶えておく。

そう誓って、竜はあいりの唇を覆った。

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