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秘蜜に濡れて
第17章 if u are luv
竜はさっさと前を歩く。

「あのね、俺、誰かさんがずーっと寝こけてるから、後半のオフ潰れたんだよね」

あいりは思い当たる節に口を噤む。

「少しくらい付き合ったってバチは当たらないんじゃない?」

助手席に促され、あいりは縮こまってシートベルトを締めた。

当て所なく車は走り続ける。

高速に乗って平日の昼間というガラガラのサービスエリアで停まる。

「腹減った、テキトーに買ってきて」

顎であいりをサービスエリアに行かせる。

名物と銘打ったお弁当と、コーヒー、ガムを買って建物を出ると、竜はドッグランの側で大型犬と戯れあっていた。

無邪気な笑顔にあいりは声を掛けるのを忘れて魅入っていた。

近くのベンチでお腹を満たす。

海が近いのか、風には仄かに潮の香りが混ざっていた。

「海かー…」

「裏手から見えましたよ?」

竜は立ち上がると、建物の裏手に回った。

目の前に広がる海は太陽に反射して煌めいていた。

何も言わず、ただ海を眺めて、隣には同じ様にあいりが並んでいた。

その横顔を見つめる。

「秋月さん?」

「…秋月さん、か…」

望まないと言い聞かせた筈なのに僅かな期待が首を擡げる。

「竜、さん?」

仕返しとばかりに悪戯な笑顔で名前を呼ぶあいり。

好きだから。

赦せる。

愛したから。

赦せない。
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