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秘蜜に濡れて
第21章 儚いダイヤモンド
「遅いっ!」

健一は時計と扉を交互に見つめて落ち着かない様子でウロウロと歩き廻っている。

メンバーはアップを終えて、後は撥春を待つばかりだ。

竜はスタッフが会場から運び込んだ手紙をランダムに読み散らかしていた。

「ちゃんと来るから落ち着けよ」

手紙に視線を落としたまま竜が諭す。

「いや、でも…」

「あいつは、来る」

はっきりと言い放って、竜は一通の封筒を手にして出て行った。


リハ開始10分前になって、撥春は現れた。

「撥春!!」

健一が駆け寄ると撥春はごめんと一言呟いた。

竜も部屋に戻ると、撥春は改めてメンバーに向き直った。

「…迷惑かけて…ごめん」

深く頭を垂れる撥春に、メンバーもマネージャー一同もほっと胸を撫で下ろした。

「竜…」

「いくぞ」

胸をドンッと叩くと竜はニヤリと笑った。

撥春は言いたかった言葉を全部飲み込んで頷いた。



客席からは今か今かと歓声が聞こえてくる。

優と博嗣さんで最後まで衣装の手直しをする。

ステージの直ぐ裏で円陣を組む。

「ファイナル1日目っ!!最後まで突っ走るぞっ!」

将人の声が響く。

「途中でヘタレんなよっ!!」

「おおっしっ!」

健一と貴文にそれぞれ背中に気合いの一発を受けながら、其処へ立つ。

光と音と熱気の渦の真ん中へ。
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