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秘蜜に濡れて
第4章 time limit
あいりが思っていたよりも酔いが回っていて、部屋を出るときにふらついた。

「大丈夫?」

「はい、すいません」

へらっと崩れた笑顔を向けられた撥春は、ニヤけた表情を隠すように先に階段を降りた。

「ご馳走さまでした」

「相馬さん、だっけ?撥春とじゃなくお友達と来て欲しいな」

「谷垣さん、何ですか、それ?」

「ヤローなんか来ても華がねーんだよ」

憎まれ口を叩きながらも、笑って二人を見送った。

店を出ると直ぐ撥春は指を絡ませてきた。

「いしゃかしゃん?」

「…酔ってる?」

「よってません」

「日本酒、初めて?」

「にかいめ」

上気した頬に蕩けた瞳、恥ずかしさよりも気持ちが先立っているからか、指が解けることもなく、寧ろ寄り添っていた。

「美味しかった?」

「はい」

「眠くない?」

「はい」

「うち、泊まる?」

「はい」

にこっと笑ったあいりから笑顔が消えることはない。

「いしゃかしゃん?じかんぎれになっちゃうよ?」

酔っているフリだとしたら…

撥春は確かめる前にタクシーを捕まえた。
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