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秘蜜に濡れて
第9章 BLIND
「何してるの?」

チェックシートを書き込んでいたあいりが顔を上げるとそこには律が立っていた。

「こんにちは…どうして此処に?」

「私が先に質問したんだけど?」

「…仕事です」

「ふーん」

確かにかっちりしたスーツを身に纏い、パスを首から提げているあいり。

「美山さんは?」

「明日イベントがこっちであるから来たついでに、私にイメージキャラクターを頼みたい企業が出展してるって聞いたから見に来たの」

「そうですか、お疲れ様です」

律は舐める様にあいりを見定めている。

「別れる気にはなった?」

書き込む手が止まる。

「…いいえ」

きっぱりと言い放ったあいりに、律は驚く。

俺だけだと何度も囁いた撥春。

過去は、過去。

「…仕事、受けないわよ」

「あなたはそんな事で仕事を選ぶ人じゃありませんから」

目を丸くする律、鼻で笑う。

「どうかしら?」

「いいえ、あなたはプロのモデルさんですから、その仕事が自分と世間に与える影響をちゃんとわかってます」

「私を推すつもり?」

「はい」

あいりは迷いのない真っ直ぐな瞳で律を見据えた。
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