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鈴(REI)~その先にあるものは~
第5章 永遠の別離~無窮~
お亀は静かに眼を閉じた。
嘉利の怒りは当然のことだ。三月もの間、嘉利の傍にいながら、嘉利から愛の言葉を囁かれながら、お亀は今この瞬間まで、己れの本心を明かさなかったのだから。そのことを騙していた、卑怯だと詰られれば、言い訳のしようもない。嘉利がそんなお亀に裏切られたと思ったとしても、仕方がない。
せめて、嘉利の心がこれ以上、傷つくことがないように、凍りつくことがないように。
ただ、それだけを祈った。
「許せ」
嘉利が更に両手に力を込めようとしたまさにその瞬間、どこかからチリーン、チリーンという音が聞こえてきた。
最初、本当にかすかな音だったのが、次第に大きくなり、お亀はハッと現に立ち戻り眼を開く。
チリーン、チリーン。
まるで死者を弔うときの野辺送りで唱えるような、世にも物哀しい音、魂を揺さぶるような切ない音色だ。
突如として、嘉利がお亀の首から手を放した。
「う、うわあー」
嘉利は両手で頭を押さえ、その場にうずくまった。
その間にも、鈴の音はどんどん大きくなってゆく。やがて、初めは一つだった鈴の音が二つになり、三つになり、しまいには無数の鈴の音が重なって部屋中に響き渡った。
嘉利は頭を腕で抱え込み、苦しみ、のたうち回っている。
「殿、殿―!!」
お亀は自分が男に殺されかけていたことも忘れ、嘉利の傍に近寄った。
「あ、頭が割れるように、痛む」
嘉利が頭を抱えて呻いた。
「殿? いかがなされました? 頭(つむり)がお痛みになられるのでございますか」
これはただ事ではない。早く医者か誰かを呼ばなくてはならない。
嘉利の怒りは当然のことだ。三月もの間、嘉利の傍にいながら、嘉利から愛の言葉を囁かれながら、お亀は今この瞬間まで、己れの本心を明かさなかったのだから。そのことを騙していた、卑怯だと詰られれば、言い訳のしようもない。嘉利がそんなお亀に裏切られたと思ったとしても、仕方がない。
せめて、嘉利の心がこれ以上、傷つくことがないように、凍りつくことがないように。
ただ、それだけを祈った。
「許せ」
嘉利が更に両手に力を込めようとしたまさにその瞬間、どこかからチリーン、チリーンという音が聞こえてきた。
最初、本当にかすかな音だったのが、次第に大きくなり、お亀はハッと現に立ち戻り眼を開く。
チリーン、チリーン。
まるで死者を弔うときの野辺送りで唱えるような、世にも物哀しい音、魂を揺さぶるような切ない音色だ。
突如として、嘉利がお亀の首から手を放した。
「う、うわあー」
嘉利は両手で頭を押さえ、その場にうずくまった。
その間にも、鈴の音はどんどん大きくなってゆく。やがて、初めは一つだった鈴の音が二つになり、三つになり、しまいには無数の鈴の音が重なって部屋中に響き渡った。
嘉利は頭を腕で抱え込み、苦しみ、のたうち回っている。
「殿、殿―!!」
お亀は自分が男に殺されかけていたことも忘れ、嘉利の傍に近寄った。
「あ、頭が割れるように、痛む」
嘉利が頭を抱えて呻いた。
「殿? いかがなされました? 頭(つむり)がお痛みになられるのでございますか」
これはただ事ではない。早く医者か誰かを呼ばなくてはならない。