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鈴(REI)~その先にあるものは~
第5章 永遠の別離~無窮~
「殿、すぐに誰かを呼んで参りますゆえ」
お亀がそんなことを考え、嘉利の顔を覗き込むと、嘉利が悲鳴を上げた。
「止めろ、止めてくれ」
「殿?」
お亀は茫然と眼を瞠った。
嘉利がふらふらと立ち上がる。まるで夢遊病者のようによろめき、ふらつきながら、数歩前へと歩いたかと思うと、何ものかを追い払うように片手をせわしなく振った。
「く、来るな。俺に近付くな。消えろ、今すぐにこの場から失せろ」
お亀には、この時、鈴の音は確かに聞こえていたのだけれど、嘉利に視えていたものまでを見ることはなかったのだ。
実は、この時、嘉利の眼には微笑んで手招きしている女が映じていたのである!
わずかによろよろと後ずさった嘉利がへたり込んだ。
「お、鬼」
その禍々しいひと言に、お亀は思わず息を呑んだ。
チリーン 。チリーン。
忌々しいこの鈴の音が鳴る度に、頭が割れそうに痛む。しかも、厄介なことに、この鈴の音は次第に大きくなり、まるで何千個もの鈴が同時に鳴っているような大音響でこの部屋に響き渡っている。
死者を弔う葬列の奏でるような、陰鬱な、聞いているだけで気が滅入るような、厭な音だ。
それに、何だ、この女は。
嘉利は、自分の眼前でいかにも気遣わしげに自分を見つめる女を見た。
美しい女だ。
ただ美しいだけでなく、あどけなさすら漂う可憐な女なのに、不思議な色香のある女だ。
美しい女なら、厭というほど見てきたが、これほど美しい女は見たことがない。
まるで天女のようではないか。
お亀がそんなことを考え、嘉利の顔を覗き込むと、嘉利が悲鳴を上げた。
「止めろ、止めてくれ」
「殿?」
お亀は茫然と眼を瞠った。
嘉利がふらふらと立ち上がる。まるで夢遊病者のようによろめき、ふらつきながら、数歩前へと歩いたかと思うと、何ものかを追い払うように片手をせわしなく振った。
「く、来るな。俺に近付くな。消えろ、今すぐにこの場から失せろ」
お亀には、この時、鈴の音は確かに聞こえていたのだけれど、嘉利に視えていたものまでを見ることはなかったのだ。
実は、この時、嘉利の眼には微笑んで手招きしている女が映じていたのである!
わずかによろよろと後ずさった嘉利がへたり込んだ。
「お、鬼」
その禍々しいひと言に、お亀は思わず息を呑んだ。
チリーン 。チリーン。
忌々しいこの鈴の音が鳴る度に、頭が割れそうに痛む。しかも、厄介なことに、この鈴の音は次第に大きくなり、まるで何千個もの鈴が同時に鳴っているような大音響でこの部屋に響き渡っている。
死者を弔う葬列の奏でるような、陰鬱な、聞いているだけで気が滅入るような、厭な音だ。
それに、何だ、この女は。
嘉利は、自分の眼前でいかにも気遣わしげに自分を見つめる女を見た。
美しい女だ。
ただ美しいだけでなく、あどけなさすら漂う可憐な女なのに、不思議な色香のある女だ。
美しい女なら、厭というほど見てきたが、これほど美しい女は見たことがない。
まるで天女のようではないか。