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鈴(REI)~その先にあるものは~
第1章 序章~萌黄の風~
「ホウ、馬廻り役相田の伜のう」
 男が鼻を鳴らす。
 着ているものが上物であることからも、この男が藩でもかなりの身分、もしくは役職の武士であることは判った。恐らく、良人の実家(さと)方よりははるかに上の立場なのだろう。
 そんな相手に対して、馬廻り役の相田家の嫁であることを口にしたことが良かったのかどうか。
「それでは、そなたが余にこのように可愛がられたと知れば、この上ない家の誉れとたいそう歓ぼう」
 男は荒んだ笑いを刻み、お香代の肌襦袢に手を掛けた。
「何をなさるのです。無礼もたいがいになされませぬと、怒りますよ」
「晋三郎、随分と気の強い女子のようだの」
 男は面白げに言いながらも、紐をするすると解いてゆく。
「何をするの、止めなさい」
 お香代が悲鳴を上げ暴れると、両頬に火球が炸裂したかのような痛みが走った。
 殴られたのだと―と感じるより前に、あまりの痛みにじんわりと涙が滲んだ。
「お止めなさいッ」
 それでも気丈に叫ぶお香代を見、男は晋三郎と呼ぶ男と互いに顔を見合わせて卑猥な笑みを浮かべた。
「ああっ」
 晋三郎と呼ばれた男がすかさず布きれをお香代の口に押し込む。
 後は、くぐもった悲鳴と衣擦れの音が聞こえてくるばかりになった。
 悲鳴は後にはすすり泣きに代わり、時に烈しい苦痛に耐えるような呻きになった。
 しかし、その声も次第に間遠になり、やがて深閑とした森の奥で、お香代の白い身体は二人の狂った男たちによって蹂躙され続けた。
 最初にお香代を犯した男はどうやら晋三郎という男の主人らしい。立て続けにお香代を二度犯した後、今度は晋三郎がお香代を貫いた。まるで飼い犬が主人のお零れを預かるように、晋三郎はお香代の身体を貪ったのだ。
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