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鈴(REI)~その先にあるものは~
第2章 友の悲劇~無明~
 お亀はそう思ってきた。
 祝言を挙げてから、お香代からは時折、思い出したように文が届いた。どれもが若妻となったお香代の恥じらいや、二人の仲睦まじさを綴っており、人によってはその内容を当てつけがましいとか、恥も外聞もなくのろけて―と非難したりやっかんだりするのかもしれなかったが、お亀は、そんなことはなかった。
 元来、実の親にでさえ呆れられるほどのお人好しなのだ。ただ、友からの文を読み、その幸せな日々に安堵し、共に歓んだ。―本当にそれだけのことだった。
 たまに届く文によれば、お香代は結婚後もなかなか子ができないのを気にしているようだった。こんな場合、一体何と言えば良いのか、お亀には判らない。何と言っても、お亀自身がまだ人の妻ではないのだし、安易に慰めの言葉を書いても、〝他人の気も知らないで〟と思われてしまうかもしれない。
 ゆえに、お亀は、このことについては、ただお香代の不安や愚痴を受け止めるだけにとどめた。
 井戸端に寄り添い合うようにして立つ二本の樹は、既に亡くなった両親や、お香代と小五郎の姿を彷彿とさせる。確かにいまだに独り身なのを淋しいと思わないわけではなかったけれど―、自分は不器量だし気働きもないからと諦めてもいたし、そんな自分でもいずれ縁があれば嫁ぐこともあるかもしれないと安気に構えてもいた。
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