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鈴(REI)~その先にあるものは~
第2章 友の悲劇~無明~
 今朝、お亀は我が眼を疑った。昨日の朝、紅い花が一輪、確かに花開いていたはずなのに、今朝はもう落ちているのだ。椿の花が花ごと落ちるのは別段珍しいことではない。しかし、その落ち方があまりにも不吉というか、無惨だった。鳥にでも喰われてしまったのか、転がり落ちた花のあちこちがついばまれたようにむしられ、無数の花びらが地面に散っていた。
 その無惨な有り様を、お亀は茫然とその場に立ち尽くして眺めていた。何故か、胸騒ぎがしてならない。その理由が、得体の知れぬ不安の因が何なのかは知るすべもなかったけれど、何か禍々しい予兆のような気がしてならなかった。
 お亀はしゃがみ込むと、落ちた椿の花を手のひらに載せた。惨たらしく紅い花びらを喰われ、引き裂かれた花を愛おしむかのように、そっと指で触れる。それからも随分と長い間、お亀はそのまま紅い花を見つめていた。
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