この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
鈴(REI)~その先にあるものは~
第2章 友の悲劇~無明~
「―」
お亀は、あまりの酷い真実にしばらく言葉もなかった。
「小五郎さま、どうして、わざわざ私にそのことを教えて下さったのですか」
お亀がやっとの想いで問うと、小五郎は小さく頷いた。
「これを渡したいと思うたのです」
小五郎が懐から取り出したのは、大人の掌にすっぽりと納まるほどの大きさの鈴だった。やや大きめの鈴は、眼の前で振ると、チリリと澄んだ音色を奏でる。紅い紐が結びつけられていた。
「この鈴は、お香代が大切にしていたものです」
「ああ、お香代ちゃんが宝物にしていたあの鈴ですね。懐かしい。お香代ちゃん、亡くなったお爺ちゃんが縁日の露店で買ってくれたのだと、それはもう後生大事にしていた」
お亀の脳裡に、ありし日のお香代の笑顔が甦る。夏の夕暮れ、二人で庭の池に笹舟を浮かべ、振るような蝉の声に耳を傾けたあの日、笹舟に泥団子を載せて、ままごとをして戯れたあの日。
―これ、じっちゃんが買ってくれたのよ。
得意げに帯につけた鈴を見せてくれたお香代の愛らしい笑顔が瞼にちらついて消えない。
森で不幸にも行きずりの男たちに手込めにされてしまったあの日も、お香代は帯飾りとして使っているこの鈴だけは、ちゃんと持ち帰っていたのだ。
「お香代は遺書のようなものは一切残しませんでしたが、恐らく、これは一番の友であったあなたに貰って頂くのが良いと存じました」
小五郎の沈んだ声に、お亀は頷いた。
「判りました。確かに、お香代ちゃんの形見の品、頂戴致します」
お亀が両手で押し頂くように鈴を受け取ると、更に小五郎は懐から何やら取り出した。
「それから、ご迷惑でなければ、こちらもお受け取り願いたい」
「これは―」
お亀は弾かれたように顔を上げ、小五郎を見上げた。
お亀は、あまりの酷い真実にしばらく言葉もなかった。
「小五郎さま、どうして、わざわざ私にそのことを教えて下さったのですか」
お亀がやっとの想いで問うと、小五郎は小さく頷いた。
「これを渡したいと思うたのです」
小五郎が懐から取り出したのは、大人の掌にすっぽりと納まるほどの大きさの鈴だった。やや大きめの鈴は、眼の前で振ると、チリリと澄んだ音色を奏でる。紅い紐が結びつけられていた。
「この鈴は、お香代が大切にしていたものです」
「ああ、お香代ちゃんが宝物にしていたあの鈴ですね。懐かしい。お香代ちゃん、亡くなったお爺ちゃんが縁日の露店で買ってくれたのだと、それはもう後生大事にしていた」
お亀の脳裡に、ありし日のお香代の笑顔が甦る。夏の夕暮れ、二人で庭の池に笹舟を浮かべ、振るような蝉の声に耳を傾けたあの日、笹舟に泥団子を載せて、ままごとをして戯れたあの日。
―これ、じっちゃんが買ってくれたのよ。
得意げに帯につけた鈴を見せてくれたお香代の愛らしい笑顔が瞼にちらついて消えない。
森で不幸にも行きずりの男たちに手込めにされてしまったあの日も、お香代は帯飾りとして使っているこの鈴だけは、ちゃんと持ち帰っていたのだ。
「お香代は遺書のようなものは一切残しませんでしたが、恐らく、これは一番の友であったあなたに貰って頂くのが良いと存じました」
小五郎の沈んだ声に、お亀は頷いた。
「判りました。確かに、お香代ちゃんの形見の品、頂戴致します」
お亀が両手で押し頂くように鈴を受け取ると、更に小五郎は懐から何やら取り出した。
「それから、ご迷惑でなければ、こちらもお受け取り願いたい」
「これは―」
お亀は弾かれたように顔を上げ、小五郎を見上げた。