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鈴(REI)~その先にあるものは~
第2章 友の悲劇~無明~
「お亀どのは、この手ぬぐいを憶えておいでか」
 小さな一枚の白い手ぬぐいが、ひらひらと揺れる。それは、やはり、小さな想い出のひとひらをお亀の胸に呼び起こした。
 ある情景が、お亀の脳裡にありありと甦った。
 そう、あれは確か最後に伯父の屋敷に泊まりにいった夏のことだ。お亀とお香代が共に十三の夏の出来事だった。
 油照りの夏の夕暮れ、お亀が庭の井戸端で脚を洗っていると、背後で脚音がした。
 愕いて振り向くと、相田小五郎が照れたような、困ったような紅い顔で立っていた。
 小五郎も暑い最中の猛稽古で全身汗まみれ、顔にも玉のような汗が浮いている。お亀は端折った着物の裾を直し、剥き出しになった太股を慌てて隠した。
 照れ隠しもあって、小五郎に咄嗟に自分の使っていた手ぬぐいを差し出してしまったのだ。
―これ、良かったら使って下さい。
 言うなり、脱兎のごとくその場から逃げ出した。
 後には、手ぬぐいを握りしめ、茫然と立つ少年だけが残された―。
 あの夏を最後に、お亀は翌年から伯父の屋敷に遊びにゆくことはなくなった。お亀も大きくなったから、今更遊びにゆく歳でもなくなったのと、父がその頃から体調を崩し寝たり起きたりするようになったからだ。
 病身の父を抱え、母がお亀が留守にするのを、随分と心細がるようになったせいもあった。
 そして、その二年後、お香代と小五郎の祝言が決まったことを知った。その前年、既に父は一年の闘病生活の末、亡くなっていた。
「今だからこそ申せるが、あの時、私はひそかに、あなたが脚を洗っているところを盗み見ていたのですよ。さりながら、いつもは澄ました顔をしている自分がそのようなむっつり助平だったなぞと、他人に―いや、あなたに思われるのが厭で、一体何と言えば良いのかと途方に暮れており申した。そんな私に、あなたが手ぬぐいを貸してくれました。あの時、私は随分と自分が救われたように思いましたよ」
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