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鈴(REI)~その先にあるものは~
第2章 友の悲劇~無明~
「申し訳ござらぬ。お亀どのにはとうに昔の話、ご迷惑であれば、お許し願います。されど、それがし、この話をしたのには子細がありまする。お香代が何者かに恥辱を受けた折、どうやら、お香代は私の名を相手に告げたようなのです。お香代の葬儀を出した後、お城より殿のご使者だという方がお見えになり、過分の香典と共に、私に武芸指南役として出仕せよとのご命を賜りました」
 お亀は、ただ黙って小五郎を見つめる。
 小五郎は淡々と続けた。
「むろん、そのような話、私はお受けする気は毛頭ござらぬ。殿がいかようなるおつもりで、私にそのような命を下されたのかは判りませぬ。さりながら、憐れみにしろ、逆に挑発にしろ、私は拘わり合いになろうとは思いません」
 藩主からの遣いだという男は、慇懃な態度で囁いた。
―殿はこたびの奥方さまのご不幸については、特にお心を動かされておいでにござります。それゆえの格別なるお計らい、ここはどうかそのお心をありがたくお受けした方が御身のためと存ずる。
態度だけは丁寧だが、この話を断れば、お前の生命もどうなるかは判らぬと暗に脅してきたのだ。
 この時、小五郎はすべてを悟った。
 妻を手込めにした卑劣漢はあろうことか、木檜藩の藩主その人であるということを。
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