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鈴(REI)~その先にあるものは~
第3章 恋の始まり~辿逢(たどりあう)~
 前回は、まだ先代藩主嘉倫(よしみち)公のときに行われ、三十一歳の嘉倫公は英邁な君主として知られ、善政を敷いた中興の祖として多くの領民からも慕われていた。身分の低い者でも才あれば積極的に登用し、御前試合にも殊に力を入れられた。
 この際の応募総数は実に千人近くを数えたと云われている。この回に限り、武士だけではなく農民にまで出場資格が認められたため、小さな農村からでさえ応募者の若者がいたそうだ。嘉倫公が前回、前々回と二回に渡ってその御世に御前試合を行っているが、実際にこの御前試合で良き成績を挙げ、取り立てられた者たちの中には軽輩の子弟や農民出身者もいた。
 前回の御前試合の際、嫡子為千代君はまだ前髪立ちの童姿であった。幼名為千代こと現藩主嘉利公が父嘉倫公の突然の死によって急きょ家督を継いだのがその翌年のことである。前回の時、嘉利公は十三歳の少年であった。
 こたびの試合は嘉利が藩主となってから初めての御前試合でもある。が、その割には悪名高き藩主の御前で闘いたいと願う者はいないせいか、前評判からして芳しくはなかった。
 応募者も十年前と比べると半数にも満たず、むろん、農民には出場など認めてはいない。それでも四百名近い応募者たちの中で勝ち抜き、この晴れの日を迎えた二人の勇者たちが今、ここに立っている。
 一方は門屋(かどや)陣(じん)右衛門(えもん)良房(よしふさ)。名前からして、何やらいかにも剛の者らしい、いかめしい名前だが、つい先日あれほど多くの門弟を抱えながら突如として閉門した柳井道場の出身者である。
 柳井道場のこの閉鎖は、誰しもが仰天した。何しろ、先代道場主柳井幹之進は前々回の御前試合の優勝者であり、歴代優勝者の中でもとりわけ名の残る、いわば伝説の勇者であった。出世を望まぬ清廉潔白な人柄、多額の報奨金も藩主指南役の栄誉もすべてをなげうって辞退し、一生を後進の指導に捧げた剣聖としてその名を語られている人物なのだ。
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