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鈴(REI)~その先にあるものは~
第3章 恋の始まり~辿逢(たどりあう)~
少年が優勢になるにつれ、その場の興奮もいやが上にも高まってゆく。
今や藩主嘉利の視線もただ一人の少年に吸い寄せられていた。
「頼母、あの者、柳井と申したな」
ややあって、唐突に問われ、頼母は即座に首肯する。
「御意。柳井を名乗るからには、いずれ、例の柳井幹之進の縁者にございましょうか。それを思えば、あれほどに年若ながらも腕が立つのも頷けはいたしますが」
そこで名簿を見ていた頼母がふと思いついたように言った。
「されば、殿。この名簿の素姓書きには、柳井亀之進は柳井道場前道場主、柳井幹之進の甥とあいなっておりますぞ」
「ホウ、あの者が先の柳井道場の―」
嘉利が面白そうに言った。
「そちも、たまには良いことに気付くではないか。これは面白いことになってきた。はて、柳井道場に縁(ゆかり)の者が何ゆえ、今になってのこのことこのような場に現れたか。もしかしたら、面白きことになるやもしれぬ」
嘉利は唸ると、腕組みをして二人の挑戦者たちの闘いぶりに見入った。
「殿―、何をお考えにございますか。ご無礼ながら、この御前試合は我が藩の一大行事にて、歴代の殿も殊に力をお入れあそばされておわす大切な儀式にござります。どうか、この場だけはご自重あそばされまように」
筆頭家老としては、せめてこれくらいは諫言を試みないわけにはゆかない。
頼母が思わずそう言わずにはおれないほど、そのときの嘉利は不気味であった。くちなわのように底光りのする眼で、若き挑戦者を執拗に追いかけている。
今や藩主嘉利の視線もただ一人の少年に吸い寄せられていた。
「頼母、あの者、柳井と申したな」
ややあって、唐突に問われ、頼母は即座に首肯する。
「御意。柳井を名乗るからには、いずれ、例の柳井幹之進の縁者にございましょうか。それを思えば、あれほどに年若ながらも腕が立つのも頷けはいたしますが」
そこで名簿を見ていた頼母がふと思いついたように言った。
「されば、殿。この名簿の素姓書きには、柳井亀之進は柳井道場前道場主、柳井幹之進の甥とあいなっておりますぞ」
「ホウ、あの者が先の柳井道場の―」
嘉利が面白そうに言った。
「そちも、たまには良いことに気付くではないか。これは面白いことになってきた。はて、柳井道場に縁(ゆかり)の者が何ゆえ、今になってのこのことこのような場に現れたか。もしかしたら、面白きことになるやもしれぬ」
嘉利は唸ると、腕組みをして二人の挑戦者たちの闘いぶりに見入った。
「殿―、何をお考えにございますか。ご無礼ながら、この御前試合は我が藩の一大行事にて、歴代の殿も殊に力をお入れあそばされておわす大切な儀式にござります。どうか、この場だけはご自重あそばされまように」
筆頭家老としては、せめてこれくらいは諫言を試みないわけにはゆかない。
頼母が思わずそう言わずにはおれないほど、そのときの嘉利は不気味であった。くちなわのように底光りのする眼で、若き挑戦者を執拗に追いかけている。