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鈴(REI)~その先にあるものは~
第3章 恋の始まり~辿逢(たどりあう)~
「両名とも、いや、見事な闘いぶりであった。殊に、その方、柳井亀之助と申したか。まだ若年ながら、天晴れ。殿も殊の外ご機嫌麗しく、是非、今日の勝利を勝ち得た強者とおん直々に言葉を交わしたいと仰せじゃ」
 頼母が親しげに声をかけると、少年はハッと畏まって顔を伏せた。
「それでは、勝者柳井亀之助。恒例により、殿おん自ら盃と報奨金を賜る。そちには、いずれ、武芸指南役としてのお役目に就く名誉をも与えられよう。さ、こちらへ参られい」
 晋三郎がひときわ声を張り上げ、少年は頷き御前へと進み出る。
 むろん、既に剣は鞘に収めてある。
 幔幕の前でひざまずいた少年は両手をつき、平伏した。
「殿より盃を頂戴する」
 これまでも歴代の優勝者は藩主自ら祝杯を賜ることになっている。ゆえに、柳井亀之助がその場に進み出たことも至極順当なことであった。
 丸に桔梗の家紋を染め出したきらびやかな羽織袴に身を纏った嘉利が掲げ持った盃をクイと煽る。その後、自らが干した盃を無造作に平伏する少年に差し出した。
 少年は依然として面を伏せたままだ。
「これ、殿より盃を賜る。早う致せ」
 傍らの頼母が焦った声で促した。
 ここで、いつものように癇癪を起こされ、折角の御前試合を台無しにされては、たまったものではない。
 はらはらとなりゆきを見守る頼母が小さな吐息を洩らす。まさにその時。
 一瞬の空白が生じた。
 刹那、少年が鞘からひとたびは納めたはずの剣をスと抜いた。かと思うと、さっと刃を繰り出し、その切っ先を藩主嘉利に突きつける。
「藩主嘉利公、お生命頂戴致す。お覚悟召されい」
 声と共に輝く白刃を振り掲げ、嘉利に向かって飛びかかった少年の動きは実に速かった。その場に居合わせた誰もが、刃を抜くことすらできないほど一瞬の間であった。
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