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鈴(REI)~その先にあるものは~
第3章 恋の始まり~辿逢(たどりあう)~
 しかし。
 その場でたった一人、刀を抜いた者がいた。
 他ならぬ藩主嘉利その人であった。
 見事なまでの鮮やかさで斬りかかってきた少年の刀を嘉利は危ういところ、抜いた刀で発止と受け止めた。
 傍らで一部始終を見ていた頼母には、二人の剣がぶつかり合った瞬間、蒼白い火花が散ったのを確かに見た。
 その時、少年の落ち着いた顔に焦りが浮かんだのを、嘉利は見逃さなかった。
「さても、子どものくせに確かにようやったと賞めては遣わすが、気の毒なことに、俺はうつけでも、ただのうつけではない。物心ついたときから、剣の道だけは確かでな」
 わざと挑発するように言ってやると、少年の白い頬が紅くなった。愚弄されていると思ったのだろう。
 嘉利は少年の刀を力任せに跳ねあげると、すぐにその細い腕を掴みねじり上げた。
「この細腕で、余を殺そうとしたか。愚かな奴め。そなた、何者だ? 柳井を名乗っておるが、真に彼(か)の柳井幹之進の縁者か」
「そのようなことはどうでも良い。私は、そなたのような卑劣な者に名乗る名は持たぬ」
 少年が悔しげに言うと、嘉利は一瞬、眼を見開いた。
「何と、そなたは女か! その声は男子のものではないな。こいつは面白い。何ゆえ、女が俺を殺そうとしたのか」
 少年―いや、少女は口惜しさに歯がみしながら言った。
「貴様が私の大切な人たちを苦しめた。柳井小五郎どののの妻女お香代どのを貴様は辱めた挙げ句、身ごもらせた」
「そのような話、余は知らぬ」
 空惚ける嘉利を、少女が睨み上げる。
「とぼけるのは止せ。知らぬとは言わせぬ。貴様は、私の大切な友を苦しめ、あまつさえ死に追いやった。貴様の悪逆非道ぶりは、木檜藩はおろか、外にまで聞こえておるぞ。何故に、そのような行いをする? 藩主たる身、領民のために生きよとまでは申さぬが、人の生命を玩具のごとく扱い、動物だけでなく人までをも虫けらのごとく殺すなぞ到底許されぬ所業だ。貴様、いずれ天罰が下るぞ」
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