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鈴(REI)~その先にあるものは~
第3章 恋の始まり~辿逢(たどりあう)~
「なるほど、それで、そちが天になりかわり、俺に天罰とやらを与えに参ったというわけか」
嘉利は鼻を鳴らし、口の端を歪めた。
本人は笑っているつもりだろうが、ただ片頬を歪めただけのその笑みは何とも陰惨なものだった。
「馬鹿な奴だ。人を殺めるのに理由なぞない。ただ血にまみれ、眼の前でのたうち回る人間を見るのは、何か無性に血が騒ぐでな。そこが良いのだ。退屈しのぎや暇潰しには丁度良いぞ」
「お前は狂っている! そんな、つまらない理由で人の生命をいとも容易く奪うとは。良いか、よく聞け。人であれ、生きとし生けるものの生命は元来尊いものだ。たとえ神仏にせよ、藩主にせよ、むやみ勝手に他の者の生命を奪うことは許されぬことだ。あなたは望めば、何でもできる身分に生まれた。ならば、何故、その立場をもっと有効に使おうとはせぬ? 人の生命を奪い、傷つけるよりは、人のためになることを考え、この国に生まれて良かったと、今の世に生まれて良かったと民を歓ばせるような政を行おうとはせぬ。相手を傷つけるほど、自分もまた傷ついているんだぞ? 自分をもっと大切にしろ。そして、眼をよく開いて回りを見て欲しい。悪名高き残虐な藩主としてではなく、もっと優しさで人の心を、民を包み込むような藩主になってくれ。あなたは藩主、国の父ではないか。親であれば我が子たる領民を苦しめず、もっと慈しんでくれ」
少女が懸命な面持ちで訴えた。
「殿のおん父君、先代嘉倫公は世に並びなき名君と評判高きお方にござりました。そのお父君が殿の今のご所業の数々をお知りになられたれば、さぞやお嘆きになりましょうぞ」
刹那、嘉利の額に青筋が浮かんだ。
「利いたようことを申すなッ。父の話を俺にするでない!」
烈しい眼が嘉利の怒りの深さを物語っている。
嘉利は鼻を鳴らし、口の端を歪めた。
本人は笑っているつもりだろうが、ただ片頬を歪めただけのその笑みは何とも陰惨なものだった。
「馬鹿な奴だ。人を殺めるのに理由なぞない。ただ血にまみれ、眼の前でのたうち回る人間を見るのは、何か無性に血が騒ぐでな。そこが良いのだ。退屈しのぎや暇潰しには丁度良いぞ」
「お前は狂っている! そんな、つまらない理由で人の生命をいとも容易く奪うとは。良いか、よく聞け。人であれ、生きとし生けるものの生命は元来尊いものだ。たとえ神仏にせよ、藩主にせよ、むやみ勝手に他の者の生命を奪うことは許されぬことだ。あなたは望めば、何でもできる身分に生まれた。ならば、何故、その立場をもっと有効に使おうとはせぬ? 人の生命を奪い、傷つけるよりは、人のためになることを考え、この国に生まれて良かったと、今の世に生まれて良かったと民を歓ばせるような政を行おうとはせぬ。相手を傷つけるほど、自分もまた傷ついているんだぞ? 自分をもっと大切にしろ。そして、眼をよく開いて回りを見て欲しい。悪名高き残虐な藩主としてではなく、もっと優しさで人の心を、民を包み込むような藩主になってくれ。あなたは藩主、国の父ではないか。親であれば我が子たる領民を苦しめず、もっと慈しんでくれ」
少女が懸命な面持ちで訴えた。
「殿のおん父君、先代嘉倫公は世に並びなき名君と評判高きお方にござりました。そのお父君が殿の今のご所業の数々をお知りになられたれば、さぞやお嘆きになりましょうぞ」
刹那、嘉利の額に青筋が浮かんだ。
「利いたようことを申すなッ。父の話を俺にするでない!」
烈しい眼が嘉利の怒りの深さを物語っている。