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鈴(REI)~その先にあるものは~
第3章 恋の始まり~辿逢(たどりあう)~
 少女の姿から眼を逸らしもせず、嘉利がまざしそのままの声音で問う。
「―それに、この娘、あの女とその亭主にゆかりの者と申した。あの者たちには、俺も思うところがある。これ見よがしに自害なぞしおった女と、折角の俺の召し出しを蹴って、いずこへとも知れず逐電した亭主。実に不愉快だ。あの者たちへの鬱憤をあの娘に代わって晴らして貰うのも良い。のう、頼母。そう思わぬか」
 それは聞き取れぬほど低い呟きであった。そのため、少女には聞こえなかったのだけれど。
 そのまなざしの冷たさ、声の容赦なさに、頼母でさえハッとして藩主を見た。
 嘉利が美しい貌を歪めている。氷のような微笑。それを美しいと呼ぶ人もこの世にはいるのだろうか。頼母は、陰惨な陰にふち取られた若き主君の横顔を、ゾッとしながら眺めていた。
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