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鈴(REI)~その先にあるものは~
第3章 恋の始まり~辿逢(たどりあう)~
 男性と比べれば、女のか弱い力が弱点ではあるが、それでも伯父に鍛えられ、自らも一心に修練を積んだお亀であってみれば、並の遣い手には引けを取らない。
 現に、予選から順調に勝ち残り、本戦においても初戦は難なく突破、以後も二回戦、三回戦と勝ち抜き、ついには木檜城のあの男に近付くことができのだ。
 そのお亀をあの嘉利という男はいともあっさりと交わした。まさに百人に一人、いや、千人に一人出るか出ないかの逸材だろう。
 だが。あの男の剣は、伯父が使う剣とは正反対の剣―つまり殺人剣だ。殺人剣とは、文字どおり、相手を殺す剣。己れの身を守るためではなく、自ら攻撃し、しかも最初から相手の生命を取ることを目的とし使う剣。
―そのような剣は邪道だ。
 伯父は、口癖のように言い、殺人剣を忌み嫌っていた。
 剣は人なりとはよく言ったものだと思う。確かに、嘉利の放った一撃は凄まじかったが、その剣は情け容赦のない剣だ。一歩間違えば、あの男が繰り出した切っ先は、自分の喉を刺し貫いていたに相違ない。
 あの男は敢えて、急所を外したのだ。
 殺そうと思えば、あの男の腕なれば一撃でお亀の息の根を止めることができたはず。それを敢えてしなかったのは、お亀を少なくともあの時は、殺すつもりはなかったからだろう。
 死の恐怖をたっぷりと味合わせた上で、なぶり殺しにでもするつもりなのか。いずれにせよ、あまりゾッとしない理由であの場はお亀を殺さなかったことだけは想像できる。
 さて、これから、自分はどのような殺され方をするのだろう。
 いっそのこと、ひと思いに殺してくれれば楽で良いのだけれど、あの男のことゆえ、そう容易くは死なせるつもりはないのではないか。
 お亀が我知らず小さな吐息を洩らした時、襖が外側から音もなく開いた。
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