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鈴(REI)~その先にあるものは~
第3章 恋の始まり~辿逢(たどりあう)~
 お亀が流石に薄気味悪いものでも見つめるように眺めていると、ふと嘉利が嗤いをおさめた。
「優しさ、良心、よくもまあ、それだけ綺麗な言葉ばかりを並べ立てられるものだ。反吐が出るほど上辺だけきれいな、中身のない言葉ばかりをな。―それでは、そなたに訊くが、そんな言葉に、一体、何の意味がある」
 お亀は言葉を呑み込む。
 嘉利がいっそう顔を近付けた。
 互いの呼吸が聞こえるほど間近に男の顔が迫っている。
 お亀は瞬間的に嫌悪と恐怖を感じ、思わず顔を背けた。
「それは―」
 すぐには応えられる問いではないが、それでも考えながら言葉を紡いでゆく。
「私は人を傷つける分だけ、自分の心も傷ついてゆくのだと思います。あなたは、人を殺したり傷つけたりして、本当に愉しいのですか? 愉しいと思っているのは実はあなたの無理な思い込みで、本当は人が流している涙と血と同じ分だけ、あなた自身も苦しんでいるのではないですか。私には、あなたが心から人を傷つけることを愉しんでいるようには思えません。何だか、とても淋しい、哀しそうな眼をしているように見えます」
「そなた」
 嘉利の顔が愕きに強ばった。
「俺が、この俺が淋しそうな眼をしているだと? 人を殺して、俺自身も苦しんでいるだと?」
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