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鈴(REI)~その先にあるものは~
第3章 恋の始まり~辿逢(たどりあう)~
「可愛い奴だ」
 呟きながら、首筋に降るような口づけを落とす男を、お亀は慌てて押しのけようとした。
 首筋にかかる生暖かい吐息が気持ち悪い。
「止めて、こんなことしないで!」
 両手で男の身体を突き飛ばそうとしても、やはりお亀の力ではビクともしない。
「いやっ、やめてったら。止めて」
 お亀は泣きながら暴れた。
 こらえていた涙が溢れ、白い頬をころがり落ちる。
 胸許がくつろげられ、ひんやりとした夜気が素肌に纏わりつく。胸の豊かなふくらみを両手で包み込まれて、お亀は更に悲鳴を上げた。
「誰か、来てっ。助けて。誰か―、お願い!!」
「泣くな。怖がることはない。誰もが初めは怖いと思うが、直に慣れることだ」  
 耳許で囁かれ、熱い吐息が耳朶をくすぐる。
 嫌悪感に泣きながら首を振り、それでも何とか逃れようと懸命に救いを求めるように手をさしのべた。
 しばらくやわらかな胸の感触を愉しむかのように揉みしだかれていたかと思うと、突然、薄桃色の頂が口に含まれた。
「いやーっ」
 お亀は厭々をするように烈しく首を振った。
―私、いやなのに。いやなのに、どうして―?
 幾ら厭だと訴えても、この男は最初からお亀の訴えなど耳にも入らないようだ。
 自分は大切な人たちを―お香代と小五郎の敵を討とうと城に乗り込んできたはずなのに。
 なのに、何で、その自分がこうしてこの男に無体なふるまいをされねばならない?
「止めてったら、止めて。お願いだから、殺して。こんなことをするくらいなら、殺して」
 こんな目に遭うのなら、死んだ方が良い。死んだ方がよほどマシだ。
 お亀は今初めて、お香代の気持ちが判るような気がした。
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