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鈴(REI)~その先にあるものは~
第3章 恋の始まり~辿逢(たどりあう)~
 いきなり見も知らぬ男に森で押し倒され、お香代もこんな辛い想いをしたのだ。
―でも、何で、私も。
「ひと思いに殺して」
 哀願するお亀を、嘉利が面白そうに眺めて言う。
「そなたは殺さぬ。このような良き身体を持つ女をあっさりと殺しはせぬ。生意気なところは気に入らぬが、それもまたおいおい調教し、大人しくさせるのも愉しかろう」
 こんな想いをこれからもするなんて、絶対にいや!!
 お亀が舌を噛み切ろうとしたその時、顔を覗き込んだ嘉利が片頬を歪めた。
「申しきかせておくが、そちは死んではならぬぞ。もし、そちが自害でも致せば、そちの家族や―親類縁者、そうだな、死んだ女の亭主もろとも八つ裂きにしてやろう」
「そんな、酷い」
 お亀が涙ぐむと、嘉利は嗤った。
「そちが酷いことをさせねば良いだけのことよ。そちさえ大人しく俺に抱かれれば、何も起こらぬ」
「私、何も悪いことをしたわけでもないのに」
 どうして、自分がここまでこんな男にいたぶられ、嬲られねばならないのだろう。しかも死ぬことさえ許されず、辱めを受けなければならないなんて。
「このような可愛い獲物が自分から俺のところに飛び込んでくるのが悪い。つまり、そちが悪いのだ」
 再び胸に覆い被さってきた男の頭が、涙で滲んだ。
 男の生温い口が、乳房をくわえ、舌が薄桃色の先端を弄ぶように口の中でころがす。
 たまらない厭わしさが身体中を駆け抜けた。乳房を夢中で吸う男の頭を涙でぼやけた眼で見つめながら、お亀はふと袖の中で小さな音が聞こえたことで我に返った。
 チリチリと涼やかな音色がかすかに響いてくる。
 お亀は夢中で袖に手を差し入れ、鈴を取り出した。死に物狂いで手に持ったそれを振ると、鈴は愛らしい音を立てる。
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