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鈴(REI)~その先にあるものは~
第3章 恋の始まり~辿逢(たどりあう)~
「さ、ゆるりと可愛がってやろうほどに、良い加減に大人しく致せ」
 耳許で囁かれ、抱き上げられたまま運ばれてゆく。
 嘉利は次の間に続く襖を無造作に開けた。
 どうやら、この部屋はふた間続きになっているようだ。次の間は行灯の明かりがぼんやりと火影を投げかけているだけで、薄暗かった。ぼんやりとした部屋の中央に、錦の夜具が二つ整然と並んでいる。
 その光景を眼にした途端、お亀から悲痛な悲鳴が洩れた。
「あ―」
 今、漸く判った。自分は殺されるために、ここに連れてこられたのではない。この男の慰みものにされるために連れてこられたのだ。
「いやっ、放して」
 渾身の力で暴れるお亀を、嘉利はぞんざいに褥に放った。お亀の身体は、これまで使ったこともないふかふかとした褥に受け止められる。そのせいで、乱暴に扱われた割には身体を打ち付けることもなかった。
「いやっ、お香代ちゃん。助けて、助けてえ」
 お亀は泣いて手を差しのべた。
「あの女の名など呼ぶな。死人の名前なぞ今更聞きとうもないわ」
 吐き捨てるように言った嘉利が、お亀の夜着を荒々しく引き裂いた。
「―いやっ!!」
 お亀の唇から絶望的な声が零れ落ちた。
 その唇を嘉利がすかさず塞ぐ。
 貪るような、呼吸すら奪うような口づけが辛くて首を烈しく動かしたけれど、深い口づけは延々と執拗に続いた。
 お亀のきつく瞑った眼から大粒の涙が次々に溢れ、したたり落ちる。
 唇を深く結び合わせながら、嘉利は手慣れた様子でお亀の帯を解いていった。
 身体中を這い回る男の手や唇を感じながら、お亀は大粒の涙を零し続けた。

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