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鈴(REI)~その先にあるものは~
第4章 露草~呼応~
 でも、世に残酷さを知られているあの男が飽きてしまったのだとしたら、お亀の生命は今度こそ長くはないかもしれない。閨を共にしたからとて、膚を合わせたからとて、あの男に女に対する情愛があるとは到底思えない。ひとたび飽きてしまえば、まるでボロ雑巾を捨てるように―いや、それよりももっと酷い方法で嬲り殺すのだろう。
 あの男は、そういう男なのだ。
 いつ殺されるのか。嘉利にこの一ヶ月間、慰みものにされ続け、お亀の身体は最早、汚れ切ってしまっている。今更、こんな身でのうのうと生き存えようとは思わないが、できれば、あまり苦しまずに逝きたいというのが本音であった。だが、あの冷酷な男に、苦しめずに殺してくれなどと頼めば、かえって歓ばせ嗜虐心を煽るだけだ。
 そんなことをとりとめもなく考えていると、また涙が出てきた。お香代の形見の鈴を帯から取り出そうとしたその時、聞き憶えのある声が降ってきて、思わずピクリと身を震わせた。
「また泣いているのか。一体、そなたが泣いておらぬことなどあるのか?」
 お亀は弾かれたように振り向き、両手をついた。
「どうだ、月のものは終わったか?」
 唐突に問われ、お亀は羞恥に頬を染めた。
 女の立場としては、面と向かって訊ねられたくはない話題だ。と、同時に、恥ずかしさだけではなく、ヒヤリとしたものが背筋を走った。
 嘉利の冷めた眼は、お亀の嘘を端から見抜いているかのようだ。
 しかし、嘉利は話題が話題だけに、お亀が恥ずかしがったと良いように理解したらしい。―と、お亀が楽観的に受け止めた時、嘉利が口の端を歪めた。
「ま、良い。たとえ、それが俺を拒むための言い訳だとしても、この際、大目に見てやろう。のう?」
 嘉利はお亀の顔を見て意味ありげに笑った。
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