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鈴(REI)~その先にあるものは~
第4章 露草~呼応~
 やはり―嘘は見抜かれていたようだ。
 今度こそ、どのような罰を与えられるかと思うと、身が竦む。
「ちと庭に出てみぬか」
 そのひと声に、次の間に控えていた腰元が近寄り、嘉利とお亀の草履をきちんと揃えて靴脱ぎ石に置いた。
 お亀はあまり気が進まなかったが、殿の仰せとあれば従わないわけにはゆかない。嘉利の後に続いて、自分も草履を突っかけ、庭に降り立った。
「今年は梅雨入りが遅いな」
 お亀の不安をよそに、嘉利はどこかのんびりした声で言う。
 と、突如として嘉利がお亀を引き寄せた。
「今宵は、辞退することは許さぬぞ。良いか」
 耳許で囁かれ、お亀はうなだれた。
 この様子では、今夜はお亀にとっては辛い一夜になりそうだった。暗澹とした想いで思わず涙ぐんだお亀を、嘉利が感情の読み取れぬ瞳で見つめた。
「おい、脚許を見てみろ」
 突如として言われ、お亀はハッとして脚許を見た。
 見れば、今少しのところであの花―露草を踏むところであった。
「どうした、三日前、そちは俺に何と申したか、もう忘れたのか? 花も生きているゆえ、踏んではならぬ、摘んではならぬと鹿爪らしい顔で申したではないか」
「も、申し訳ございませぬ」
 お亀が消え入るような声で言うと、嘉利はその場には場違いなような、笑いを含んだ声で言った。
「俺が先刻、そなたを止めなければ、そなたはこの花を踏んでいたぞ?」
「―申し訳ございません」
 ひたすら詫びるお亀に、嘉利が吐息混じりに言った。
「そなたは俺がそれほどまでに厭か?」
 厭だと応えられれば、どんなに気が楽だろう。あなたなど嫌いだから、早く解放して欲しい、さもなければ、慰みものにするためだけにここに閉じ込めておくのは止めて、いっそのことひと思いに殺して欲しい。
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