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鈴(REI)~その先にあるものは~
第4章 露草~呼応~
 そう頼みたい。だが、言えない。
 涙の滲んだ眼に、露草の清しい蒼がぼやける。
 嘉利はなおもお亀を静かな眼で見つめていたかと思うと、思いもがけぬことを言った。
「そちは、俺の父の話を聞いたことがあるか」
「殿のお父上さまのお話にございますか?」
 お亀が取った行動自身も、自分でさえ信じられないものだった。
 愕くべきことに、嘉利がふと思いついたように洩らした呟きに、お亀は問い返していたのだ。
「父は俺と違って、評判が良かった。そう申せば、そなたもそのようなことをあの時、申していたな」
―殿のおん父君、先代嘉倫公は世に並びなき名君と評判高きお方にござりました。そのお父君が殿の今のご所業の数々をお知りになられたれば、さぞやお嘆きになりましょうぞ。
―利いたようことを申すなッ。父の話を俺にするでない!
 〝あの時〟というのは、ひと月前の御前試合を指すことは明白だ。
 あのときのやりとりが脳裡に甦る。
 あの日、お亀が先代の名を出したときの嘉利の怒りは凄まじかった。もし、視線だけで人を射殺すことができるのであれば、お亀はあの瞬間、嘉利にあの氷のような視線で射殺されていたに相違ない。
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