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鈴(REI)~その先にあるものは~
第4章 露草~呼応~
「ホウ、今日のそなたはいつになく殊勝だな。そのように大人しく素直なそなたは、なおのこと可愛いぞ」
「お戯れを」
お亀の白い頬に朱が散った。
今日の嘉利はこれまでに見たことがないほど穏やかで、機嫌が良かった。まるで別人のようだ。
「俺のことを、そなた何と思うていた。女に甘い睦言の一つも言えぬ朴念仁と思うたか」
揶揄するように言い、声を上げて笑った。
いつも、こんな風に笑っていれば良いのに。
ふと、そんなことを思う。
嘉利には、何か常に暗い翳りのようなものが纏わりついている。強いていえば、孤独だろうか。暗い光を宿した瞳は凍てついて、それが何故かお亀には時々、とても哀しげに淋しそうに見えるのだ。
だが、そんなことを言えば、嘉利はまた怒るだろう。
「そなたが柳井幹之進の縁者というのは真のことか?」
唐突に訊ねられ、お亀は少し躊躇った後、頷く。今更、隠すようなことでもない。
「はい、柳井幹之進は私の伯父に当たりまする」
「そなたの剣の腕は女ながら、たいしたものであった。あれは、大方、伯父から教えを請うたものであろうな」
直截に賞められ、お亀はまた頬をうっすらと染めた。
「殿ほどのお方にそこまでお褒め頂き、光栄にございます。僭越を承知で申し上げますが、殿の剣技こそ、真にお見事なものと感服仕りましてございます。まさに、剣の天才とお見受け申し上げました。正直に申しますと、私の伯父が生きておりましたとしても、殿ほどのお方とお手合わせ致せば、負けておったやもしれぬと存じます。実は私、あの後で殿のような遣い手と直接刃を交えようと考えたなぞ、何とも無謀な生命知らずなことをしたと冷や汗を流しました。もとより、我が生命を捨てることは覚悟の上での行いではございましたが」
お亀が素直に心境を語ると、嘉利は晴れやかに笑った。
「お戯れを」
お亀の白い頬に朱が散った。
今日の嘉利はこれまでに見たことがないほど穏やかで、機嫌が良かった。まるで別人のようだ。
「俺のことを、そなた何と思うていた。女に甘い睦言の一つも言えぬ朴念仁と思うたか」
揶揄するように言い、声を上げて笑った。
いつも、こんな風に笑っていれば良いのに。
ふと、そんなことを思う。
嘉利には、何か常に暗い翳りのようなものが纏わりついている。強いていえば、孤独だろうか。暗い光を宿した瞳は凍てついて、それが何故かお亀には時々、とても哀しげに淋しそうに見えるのだ。
だが、そんなことを言えば、嘉利はまた怒るだろう。
「そなたが柳井幹之進の縁者というのは真のことか?」
唐突に訊ねられ、お亀は少し躊躇った後、頷く。今更、隠すようなことでもない。
「はい、柳井幹之進は私の伯父に当たりまする」
「そなたの剣の腕は女ながら、たいしたものであった。あれは、大方、伯父から教えを請うたものであろうな」
直截に賞められ、お亀はまた頬をうっすらと染めた。
「殿ほどのお方にそこまでお褒め頂き、光栄にございます。僭越を承知で申し上げますが、殿の剣技こそ、真にお見事なものと感服仕りましてございます。まさに、剣の天才とお見受け申し上げました。正直に申しますと、私の伯父が生きておりましたとしても、殿ほどのお方とお手合わせ致せば、負けておったやもしれぬと存じます。実は私、あの後で殿のような遣い手と直接刃を交えようと考えたなぞ、何とも無謀な生命知らずなことをしたと冷や汗を流しました。もとより、我が生命を捨てることは覚悟の上での行いではございましたが」
お亀が素直に心境を語ると、嘉利は晴れやかに笑った。