この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
鈴(REI)~その先にあるものは~
第4章 露草~呼応~
「ホウ、今日のそなたはいつになく殊勝だな。そのように大人しく素直なそなたは、なおのこと可愛いぞ」
「お戯れを」
 お亀の白い頬に朱が散った。
 今日の嘉利はこれまでに見たことがないほど穏やかで、機嫌が良かった。まるで別人のようだ。
「俺のことを、そなた何と思うていた。女に甘い睦言の一つも言えぬ朴念仁と思うたか」
 揶揄するように言い、声を上げて笑った。
 いつも、こんな風に笑っていれば良いのに。
 ふと、そんなことを思う。
 嘉利には、何か常に暗い翳りのようなものが纏わりついている。強いていえば、孤独だろうか。暗い光を宿した瞳は凍てついて、それが何故かお亀には時々、とても哀しげに淋しそうに見えるのだ。
 だが、そんなことを言えば、嘉利はまた怒るだろう。
「そなたが柳井幹之進の縁者というのは真のことか?」
 唐突に訊ねられ、お亀は少し躊躇った後、頷く。今更、隠すようなことでもない。
「はい、柳井幹之進は私の伯父に当たりまする」
「そなたの剣の腕は女ながら、たいしたものであった。あれは、大方、伯父から教えを請うたものであろうな」
 直截に賞められ、お亀はまた頬をうっすらと染めた。
「殿ほどのお方にそこまでお褒め頂き、光栄にございます。僭越を承知で申し上げますが、殿の剣技こそ、真にお見事なものと感服仕りましてございます。まさに、剣の天才とお見受け申し上げました。正直に申しますと、私の伯父が生きておりましたとしても、殿ほどのお方とお手合わせ致せば、負けておったやもしれぬと存じます。実は私、あの後で殿のような遣い手と直接刃を交えようと考えたなぞ、何とも無謀な生命知らずなことをしたと冷や汗を流しました。もとより、我が生命を捨てることは覚悟の上での行いではございましたが」
 お亀が素直に心境を語ると、嘉利は晴れやかに笑った。
/113ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ