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鈴(REI)~その先にあるものは~
第4章 露草~呼応~
お亀は、そのまなざしのあまりの強さに気圧され、眼を伏せた。
何故だろう、その瞬間、お亀の脳裡をよぎったのは柳井小五郎の顔と、お香代の鈴と共に大切に隠し持っているあの小さな手ぬぐいであった。
―私は、私の想いは―。
自分の心に問いかけ、唇を噛む。
顔を上げると、暗い光を宿した嘉利のまなざしが射貫くように見つめていた。
そんなはずはないのに、お亀には、この時嘉利の眼が泣いているように見えた。
言えない。こんな淋しそうな眼をした男に、本当の気持ちを告げるなど、お亀にはできない。
でも、自分の心を偽り、見せかけだけの愛を示すことが、相手を本当に大切にすることなのだろうか。
本当の想いを言えないのは、嘉利が怖いからではなかった。
―そなただけは俺から離れないでくれ。
そう告げたときの嘉利の眼があまりにも淋しそうで、辛そうだったから。
もう、それ以上、何も言えなくなってしまったのだ。
抱き寄せられるままに、お亀は嘉利の逞しい胸に頬を押し当てる。
嘉利の心の闇を知ってしまった今、以前のように憎しみだけを抱くことはできなくなってしまった。むろん、嘉利が親友を殺した憎い敵であることに変わりはない。それでも。
もう、憎しみだけを抱き続けることは難しい。だからといって、嘉利の求めるように、彼を男性として愛することはできそうにもない。
何故だろう、その瞬間、お亀の脳裡をよぎったのは柳井小五郎の顔と、お香代の鈴と共に大切に隠し持っているあの小さな手ぬぐいであった。
―私は、私の想いは―。
自分の心に問いかけ、唇を噛む。
顔を上げると、暗い光を宿した嘉利のまなざしが射貫くように見つめていた。
そんなはずはないのに、お亀には、この時嘉利の眼が泣いているように見えた。
言えない。こんな淋しそうな眼をした男に、本当の気持ちを告げるなど、お亀にはできない。
でも、自分の心を偽り、見せかけだけの愛を示すことが、相手を本当に大切にすることなのだろうか。
本当の想いを言えないのは、嘉利が怖いからではなかった。
―そなただけは俺から離れないでくれ。
そう告げたときの嘉利の眼があまりにも淋しそうで、辛そうだったから。
もう、それ以上、何も言えなくなってしまったのだ。
抱き寄せられるままに、お亀は嘉利の逞しい胸に頬を押し当てる。
嘉利の心の闇を知ってしまった今、以前のように憎しみだけを抱くことはできなくなってしまった。むろん、嘉利が親友を殺した憎い敵であることに変わりはない。それでも。
もう、憎しみだけを抱き続けることは難しい。だからといって、嘉利の求めるように、彼を男性として愛することはできそうにもない。