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鈴(REI)~その先にあるものは~
第5章 永遠の別離~無窮~
男の頭を滲んだ涙越しに見つめながら、お亀はその頭を両手で包み込み、そっと胸の方に引き寄せた。
この想いは、何なのだろう。
昼間、庭で自らに投げかけた問いをもう一度、自分に向かって問いかける。
憎しみだけでもなく、愛しさでもなく、愛でも恋でもない。ましてや、哀れみや同情ではけして。
愛しさに限りなく近い感情、それでも絶対に愛とは呼べない曖昧な、不透明なもの。
「女と過ごして、このような気持ちになったのは初めてだ。藤乃、俺はもう人は斬らぬ。そなたは優しい女だ。そなたが人をむやみに傷つけたり生命奪うのを嫌うのであれば、俺はもう無益な殺生はせぬと誓おう。そなたの哀しむ顔は見たくはないのだ」
顔を上げた嘉利が呟く。
その誓いにも似た言葉は、お亀の心を衝いた。
―ねえ、あなた。私は今、やっと判ったような気がするの。あなたは、多分、前世では私の兄さんだったのかもしれなくてよ。もしかしたら、一緒に十月十日お母さんのお腹にいた双子だったのかもしれない。だって、私、あなたのことが懐かしくて、たまらない。ずっと逢えなくて、探していて、やっと逢えたような、そんな気がしてならないの。私たち、きっと、前の世では一つの魂だったのよ。それが、きっと二つに分かれてしまって、また、現世に一人一人の人間として生まれ出てしまったの。だから、私、あなたのことをこんなに懐かしいと思うんだわ。でもね、これは多分、恋じゃない。恋よりも、もっと切なくて優しくて哀しいもの。私はあなたのこと、ずっとずっと探してたような気がするけれど、私たち出逢った方が本当に良かったのかしら?
そう、今こそ漸く判ったような気がする。
多分、嘉利と自分は長い間離れ離れになっていたもう一人の私自身。魂の片割れ。元々は一つの魂だったのが、神さまの気紛れか悪戯か、二つに分かれて遠く離れてしまった。
この想いは、何なのだろう。
昼間、庭で自らに投げかけた問いをもう一度、自分に向かって問いかける。
憎しみだけでもなく、愛しさでもなく、愛でも恋でもない。ましてや、哀れみや同情ではけして。
愛しさに限りなく近い感情、それでも絶対に愛とは呼べない曖昧な、不透明なもの。
「女と過ごして、このような気持ちになったのは初めてだ。藤乃、俺はもう人は斬らぬ。そなたは優しい女だ。そなたが人をむやみに傷つけたり生命奪うのを嫌うのであれば、俺はもう無益な殺生はせぬと誓おう。そなたの哀しむ顔は見たくはないのだ」
顔を上げた嘉利が呟く。
その誓いにも似た言葉は、お亀の心を衝いた。
―ねえ、あなた。私は今、やっと判ったような気がするの。あなたは、多分、前世では私の兄さんだったのかもしれなくてよ。もしかしたら、一緒に十月十日お母さんのお腹にいた双子だったのかもしれない。だって、私、あなたのことが懐かしくて、たまらない。ずっと逢えなくて、探していて、やっと逢えたような、そんな気がしてならないの。私たち、きっと、前の世では一つの魂だったのよ。それが、きっと二つに分かれてしまって、また、現世に一人一人の人間として生まれ出てしまったの。だから、私、あなたのことをこんなに懐かしいと思うんだわ。でもね、これは多分、恋じゃない。恋よりも、もっと切なくて優しくて哀しいもの。私はあなたのこと、ずっとずっと探してたような気がするけれど、私たち出逢った方が本当に良かったのかしら?
そう、今こそ漸く判ったような気がする。
多分、嘉利と自分は長い間離れ離れになっていたもう一人の私自身。魂の片割れ。元々は一つの魂だったのが、神さまの気紛れか悪戯か、二つに分かれて遠く離れてしまった。