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鈴(REI)~その先にあるものは~
第5章 永遠の別離~無窮~
 そんな女を嘉利が許しがたく思ったとしても、致し方のないことだ。嘉利に抱かれ、耳許で愛の言葉を囁かれながら、お亀は実は嘉利を男として愛してはいなかった。などと言えば、嘉利が男としての誇りを傷つけられたと思うのは当然だ。誇りを傷つけたお亀を、嘉利は容赦ない方法で殺すだろう。
 それで良い。それこそが、お亀の望む終わりだった。嘉利に殺されるのであれば、お亀の死によって嘉利の怒りとやるせなさがわずかなりとも軽くなるのであれば、お亀はそれで良いと思う。
 お亀が物想いに耽っていたその時、紫陽花の茂みがガサリと揺れた。最初は猫かと思った。この庭には、よく野良猫が迷い込む。
 お亀も時には菓子などを与えるため、猫も心得たもので、思い出したように姿を見せる。
 が、不自然な物音は続いた。
「何者?」
 お亀は低いけれど、鋭い声で誰何した。
 宵闇の中、月明かりに深く色づいた紫陽花の花がひそやかに浮かんでいる。
 と、茂みの向こうから、低い声が響いた。
「お亀どの、私です。柳井小五郎にござる」
 刹那、お亀の顔から瞬時に血の色が失せた。
―何故、何故に、小五郎さまがこのような場所に?
 緑の茂みをかき分け、小五郎が姿を見せた。
 以前見たときより、少し痩せたのか。
 頬は少し肉が落ち、まだ少年の面影を残していた顔はいっそう精悍さを増し、彼を大人の男に見せていた。
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