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鈴(REI)~その先にあるものは~
第5章 永遠の別離~無窮~
「あの男に惚れたというのであれば、お亀どのがそのように藩主を庇い立てするのも得心はゆく。このようなことを言うのは残酷かもしれぬが、女人とは膚を合わせていれば、その中に自ずと男への情を感じるようになるものだろう。それも一度ならず何度も共に過ごせば、お亀どのだとて例外ではあるまい」
「酷い―、小五郎さまは、私をそのような女だとお思いになられているのですか」
お亀の眼に大粒の涙が溢れた。
それでは、あまりにも自分が哀れすぎる。
お亀があれほどまでに嘉利に愛されながら、ついに最後まで嘉利を愛せなかったその理由。その理由は―。
「私は、小五郎さまが仰せのような意味で、嘉利公をお慕いいたしてはおりませぬ。ただ、あのお方は、お淋しいお身の上でいらせられます。あの方の孤独は深く、たとえ、あの方が犯した罪が小五郎さまの仰せのごとく、それを理由に許されるものではないとしても、あまりにお労しく思えるのです」
「それは、訊きにくいことを言うようだが、愛するということではないのか」
燃えるような瞳が真っすぐに見つめていた。あまりに真摯な視線に、お亀は思わず受け止めきれず眼を逸らした。
「違います。自分でも上手くは言えないのですが、私は嘉利公を愛してはおりません。でも、とても大切な方だと思っています」
「愛してもおらぬ男と共に過ごして、そんな男の側妾となって、お亀どのは幸せなのか?」
沈黙が落ちる。
重い、重い沈黙に押し潰されそうだ。
小五郎の両手がお亀の細い肩を掴む。
「お亀どの。黙っていないで、応えてくれ。私から眼を逸らさずに、私を見てくれぬか」
おずおずと顔を上げ、視線を向けたお亀を小五郎は覗き込んだ。
「酷い―、小五郎さまは、私をそのような女だとお思いになられているのですか」
お亀の眼に大粒の涙が溢れた。
それでは、あまりにも自分が哀れすぎる。
お亀があれほどまでに嘉利に愛されながら、ついに最後まで嘉利を愛せなかったその理由。その理由は―。
「私は、小五郎さまが仰せのような意味で、嘉利公をお慕いいたしてはおりませぬ。ただ、あのお方は、お淋しいお身の上でいらせられます。あの方の孤独は深く、たとえ、あの方が犯した罪が小五郎さまの仰せのごとく、それを理由に許されるものではないとしても、あまりにお労しく思えるのです」
「それは、訊きにくいことを言うようだが、愛するということではないのか」
燃えるような瞳が真っすぐに見つめていた。あまりに真摯な視線に、お亀は思わず受け止めきれず眼を逸らした。
「違います。自分でも上手くは言えないのですが、私は嘉利公を愛してはおりません。でも、とても大切な方だと思っています」
「愛してもおらぬ男と共に過ごして、そんな男の側妾となって、お亀どのは幸せなのか?」
沈黙が落ちる。
重い、重い沈黙に押し潰されそうだ。
小五郎の両手がお亀の細い肩を掴む。
「お亀どの。黙っていないで、応えてくれ。私から眼を逸らさずに、私を見てくれぬか」
おずおずと顔を上げ、視線を向けたお亀を小五郎は覗き込んだ。