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鈴(REI)~その先にあるものは~
第5章 永遠の別離~無窮~
藤乃の方自身は曲者が突如として侵入してきたのだと言い張っているが、曲者といかにも仲睦まじげに手に手を取り合っているなど、誰がどう考えても不自然すぎる。
―このように申し上げては何でございますが、私には、あの男がふいに闖入してきのだとは、どうしても思えませぬ。曲者にしては、お方さまとあの男の醸し出す雰囲気は、あまりにも自然でございましたから。私には、お二人があらかじめ示し合わせてあの場所で忍び逢っていたように見えました。
このひと言が決定打となった。
側室藤乃の方が夜半、怪しい男と密会!
藩主の寵妾がよりにもよって寝所に男を引き入れ、忍び逢っていたというのは前代未聞の不祥事であった。それも、二人が乳繰り合っていたのは、藩主の居城の奥向きにおいでであった。
その噂は、たちまちにして木檜城内にひろまり、最早、藩主たる嘉利でさえ、お亀を庇い切ることは難しくなりつつあった。
お亀が夜半、男を閨に引き入れたと聞いた時、嘉利は全く取り合おうとしなかった。
「あれは、そのようなことのできる女子ではない」
端から聞き入れる風もなかったのだが、その現場を見たという証言者―奥向きに仕える腰元が嘉利の御前で例の証言
―私には、お二人があらかじめ示し合わせてあの場所で忍び逢っていたように見えました。
をしてからというもの、次第に嘉利の中に芽生えた疑惑が大きくなっていった。
―このように申し上げては何でございますが、私には、あの男がふいに闖入してきのだとは、どうしても思えませぬ。曲者にしては、お方さまとあの男の醸し出す雰囲気は、あまりにも自然でございましたから。私には、お二人があらかじめ示し合わせてあの場所で忍び逢っていたように見えました。
このひと言が決定打となった。
側室藤乃の方が夜半、怪しい男と密会!
藩主の寵妾がよりにもよって寝所に男を引き入れ、忍び逢っていたというのは前代未聞の不祥事であった。それも、二人が乳繰り合っていたのは、藩主の居城の奥向きにおいでであった。
その噂は、たちまちにして木檜城内にひろまり、最早、藩主たる嘉利でさえ、お亀を庇い切ることは難しくなりつつあった。
お亀が夜半、男を閨に引き入れたと聞いた時、嘉利は全く取り合おうとしなかった。
「あれは、そのようなことのできる女子ではない」
端から聞き入れる風もなかったのだが、その現場を見たという証言者―奥向きに仕える腰元が嘉利の御前で例の証言
―私には、お二人があらかじめ示し合わせてあの場所で忍び逢っていたように見えました。
をしてからというもの、次第に嘉利の中に芽生えた疑惑が大きくなっていった。