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ある日弟が
第1章 1.
 結婚式当日、一人は父親より泣いていた。
 それこそ激しく嗚咽するレベルの号泣だ。


 姉としては、22年間今ひとつ彼が何を考えて生きているのかわからず過ごしてきたので、多少なりとも彼が私に対して普遍的なキョウダイ間の愛情を抱いていてくれたことに感動した。
 

 式が終わってからもなお泣いている一人に近付き、

「そんなに泣かんでも新居はチャリで15分の距離やんいつでも会えるやん」

 的な感じで優しい姉の顔で涙を浮かべ背中を撫でてやったところ、

「違う、ねぇねのことで泣いてるんちゃうねん。めっちゃ腹痛いねん」 

 そう言った途端一人はバタンと五体投地よろしく、床の上に倒れたから心底びっくりした。


 救急搬送され診断結果は急性虫垂炎。
 そういう男である。私の弟は。
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