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Love adventure
第17章 マカロン②
 「いえ、智也は頭ごなしに反対する人ではないし……それに私が何処に行こうと、彼は関心なんか無いと思います。」

 ほなみは、つい本音をぽろり、と零してしまった。
 浜田は何も言わずに、穏やかな表情のまま珈琲を啜る。

「……多分私は贅沢なんです。この上我が儘を思ったら罰が当たります……」
「罰なんて当たらないよ」

 そう言ってくれる浜田の思いやりが、ほなみは嬉しくて、目にじわりと涙が滲む。

「東京には皆のお手伝いに行くわけですし……智也も何も言わないと思います」

 胸の中が逸るのを抑えられない。
 ――東京に行く。
 クレッシェンドの皆の為に、再始動に向けてお手伝いをしに行く。
 本当にそうしようと心から思っているけれど、それ以上に逢いたい。
 彼の、時には悪戯に輝き、ある時には潤み、切ない色を浮かべる瞳。
 甘い優しい声。
 西君に逢いたい。
 彼の姿をこの目で見て、自分と同じ世界に存在しているという事を、もう一度感じたい――

 笑顔を思い浮かべるだけで胸の奥が切なく締め付けられた。

「……実はマカロンにも媚薬が仕込んであるんだよ。」

 浜田は丁寧な手つきでグラスを磨きあげ、艶やかな光沢に満足げに頷き、ぽつりと呟く。

「自分に素直になる勇気の出る、媚薬だよ」





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