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Love adventure
第31章 初恋ーー口づけ
 用務員の中野には、時々何かを相談しているようだが俺達には――俺には何も言ってくれない。
 そんな彼女に、内心焦れていた。
 辛いなら、悲しいなら、頼って欲しい――
 ひとりで泣かないで俺の前で泣いて欲しい――

 いや、もし目の前で泣かれでもしたら理性がぶっ飛んで、ほなみを滅茶苦茶にしてしまうかも知れない。
 ほなみが本音を言わないのは、彼女の中で準備がまだ色々と出来ていないからだ。
 ゆっくりと岸の家の生活に慣れていき、俺とも自然に親しくなっていけば少しずつ気持ちをさらけ出してくれるようになる。
 ――そう思っていた。
 だが一緒に暮らすようになってもふたりの関係は一向に変わらず、俺は焦り始めた。
 ほなみは高校生になって、どんどん綺麗になっていく。
 吉岡とも相変わらず仲が良いが、吉岡や、他の同級生の様に彼女は化粧はしなかった。
 それなのに、ほなみには不思議な色香があった。
 艶やかな髪が揺れる度に五感を痺れさせる甘い香りが鼻腔を擽り、俺は幾度惑わされただろう。
 ほなみの、包み込む様な柔らかい笑顔を見ていると、俺の心は穏やかに凪いだ。
 だが、その一方で、彼女を、俺がもし抱いたら――彼女はどんな風に乱れて、どんな声をその可憐な唇から漏らすのだろうか、と、邪な想像を膨らませた。
 学校でも、ほなみを狙う男は何人か現れたが、俺はそいつらに然り気無く近付き、ありとあらゆる手段を使い、彼女から手を引かせた。
 俺が目を光らせているから、彼女はまだ無傷な筈だ――

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