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Love adventure
第31章 初恋ーー口づけ
 演劇部に入ったほなみは、裏方の仕事を楽しそうにやっていた。だがある日、学校から帰ってきてリビングに座り頬杖をして溜め息をつく姿を見て、俺は胸がざわめき思わず声をかけた。

「お帰り。どうしたんだ?」
「智也君……」

 ほなみは俺を何秒か見ていたが、その目が潤み、しゃくり上げ始めた。

「……!」

 俺は平然とした振りをしていたが実際は狼狽していた。
 女の子に目の前で泣かれるのは初めてではないのだが。
 未だにほなみを自分の物に出来ない俺は、告白してきた女子と付き合ったり身体を重ねたりしてきた。
 彼女達を抱く時はいつも、ほなみの姿を重ねている。
 俺が知る、ほなみの姿――
 澄みきった、だがその奥に陰が潜む瞳。
 キスをしたらすっぽりと包めてしまえそうな、小さな紅い唇――
 すらりとした白い腕に、滑らかな領(うなじ)――
 シャツの布を押し上げ存在を主張する、柔らかそうなふたつの膨らみ――
 
 俺は、頭の中をほなみで一杯にして、他の女の子達を抱いた。

『ああっ……智也く……あんっ……好き……好きよ……』

 彼女たちは、ベッドで楔を打ち込まれる度によがり、幸福そうに笑ってそう言ったが、俺の心は冷たく、虚しく悲鳴を上げていた。

 ――これが、ほなみなら。腕の中に居るのが、彼女だったなら、どんなに――



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